…“アレ”が、彼女とのハジメテの出逢いだった…。
「あの時は、本当に何事かと思ったよ…」
僕は、また紅茶を口に運んだ。彼女は、じぃ〜っと僕だけを、唯唯…見つめている。
「だって、外での食事って美味しく感じるんだもん。」
プイッと、口を尖らせソッポを向く。それでも…“アレ”は無いだろう…と苦笑いをした。その時、微かに彼女の耳元でピアスが揺れるのを見た。
「そのピアス…」
僕が、ソッと彼女の耳元で、揺れている三日月を象ったピアスに触れる。
…僕が、初めてプレゼントしたモノだ…。
「あぁ…コレ?キミが、ハジメテくれたヤツだよね。」
さっき迄、口を尖らせていた彼女の顔が、ぱぁぁっと微笑みに変わった。本当に良く表情を変える娘だ…。僕は、少し愛おしく感じる。それと同時に、消えてしまうのでは無いかと不安にもなった。
「…結構…気に入ってるよ。」
彼女は、そう言って口許だけを緩め、自分の耳元にある僕の手に自分の手を重ねた。思わず身体が、びくっとなる。
「?」
彼女は、不思議そうに首を傾げる。僕が急に顔を赤くしたから、疑問に思ったのだろう。
「どしたの?」
キョトン。とした赴きで、僕の顔を見る。
「…否…別に…」
僕が下を向いて生半可な返事を返すと、彼女は…あっ…と何かに気付いた様な声をあげる。
「…大丈夫。消えたりしないよ?」
そう言うと、もう片手で僕の手を包み込む様にして軽く握り締めた。
「…!」
僕は急いで…顔を上げて彼女を見た。彼女は…ふふっと笑みを浮かべると…“大丈夫”と、また優しく囁いた。