先輩!!
お前の弾むその声も
今はもう聞こえない
新しい環境で
俺は後輩となり
毎朝水拭きで雑巾掛けに明け暮れる
並んで歩いてた道端で
お前は小さな花を見つけ
楽しそうな声で俺を呼び止めた
『先輩!!』
目線の先には小さな青色の花があった
『この花の名前、オオイヌノフグリって言うんですよ』
『へぇ、変な名前』
嬉しそうに笑むお前を横目に俺は愛想のない返事をした
『フグリって、実は犬のあそこって意味なんですよ』
『可哀想ですよね、こんな可愛い花なのに』
世の中矛盾に溢れかえっている
『こいつもその犠牲者の一人なんだよ』
『その犠牲者って?』
『数限りない世の矛盾の犠牲者だよ』
お前は少し寂しげに見つめていた
雑巾の汚れで真っ黒くなったバケツの水を
こいつにだけはかけない様に
その都度遠くにこぼしにいった
いつでも辛い時にはこいつを探す
お前の無邪気な笑顔を映しだしてくれるから