正直に言ってしまえば、彼に見とれてしまっていたのかもしれない。
不思議な雰囲気を持った人だった。
懐かしくて、胸の奥が締め付けられた気がした。
同時に、不安にも感じた。
後から気付いた事は、この不安は紛れもなく罪悪感だったのだけれど――――。
「あ、すいません。こちらにどうぞ。」
ついとってしまった行動と、わずかだけれど見とれてしまっていた事で、うつむき加減になってしまう。
「いえ、たいした用件では無いんですよ。」
また彼は笑う。