いやはや結果的に2ヶ月もの間入院してしまった。
治療したのは息子のほうで、私は付き添い人。
ただ、この『付き添い』というのが侮れず、ひどい疲れようだった。
入院先は『心臓病』専門の病棟だったが、命にかかわる臓器の治療現場だけに、異様に空気が重たい。
空は茜色だった。
先が見えなくなって真っ暗になっていた私の精神を救ってくれたのは、偶然見かけた都会の夕焼けの景色だった。
病室から見わたせる、新宿の高層ビル街を背に沈む太陽。
ポツリと
『こんな美しい景色が見られたなんて。
今まで何度も入院していながら、気がつかなかったわ。』
と、同じ病棟の母親がこぼした。
一度足を踏み入れたら、そこ(その病気)からなかなか抜け出せない病棟(それだけ治療が難しい)。
みんなよく泣いてたっけ…。