ある日の帰り道、お店からお香の香が漂っていた。
「こんなとこにお香の店なんてあったかな?」
俺は香りに釣られるかのようにお店に入っていった。
「いらっしゃいませ。」
お店には一人の老婆が座っていた。
特に買いたい物などなく、店内の棚を見て回っていた。
「お客様、何をお探しかえ?」
「いや別に。ちょっとお香ってどんなものかな?‥って思って。」
「じゃ、こちらのお香はどうかの?」
ふと老婆を見ると、カウンターの上に赤、白、黒の3色のお香が並んでいた。
「これは?」
「このお香は不思議なお香です。効き目は煙が消えてから2時間です。」
「へぇ、不思議なことって何だろ?」
「それは炊いてからのお楽しみです。今なら3つで300円でございます。」
「安っ!」
「どうです? お買い上げしますか?」
「はい。」
俺はそのお香を購入し、早速、家に帰ってお香を炊いた。
まずは赤のお香…
煙が消え、しばらくすると俺の身体に変化が現れた。
「な、何だ‥。これは‥」
俺の身体はみるみる女性化していった。胸は膨らみ、身体の線が細くなっていき‥下腹部も変化を遂げた。
「おいおい、すげえ〜! どこから見ても女じゃねぇか!」
俺は自分の裸を鏡に映し、女性としての肉体的快楽を味わった。
「赤は女になるんだな。じゃ、白は何だろ?」
次に白のお香を炊いた。
しばらくするとまた俺の身体に変化が生じた。
「今度は何だ? 急に身体が重くなったような‥」
また鏡に裸を映した。すると肉が落ちて顔にシワが出て白髪の老人になっていた。
「うわっ! 年をとると俺ってこうなるのか?」
何か失望し過ぎて、布団の中で寝込んでしまった。
2時間経ち、ようやく元に戻ると最後の黒のお香を見つめた。
「これもまた身体が変化するのか?」
最後の黒のお香を炊いた。
煙が消えても身体に変化は起きなかった。
「なんだ、何も起きねえじゃねぇか?」
そう思ってると突然、俺は台所にあった包丁を持ち出し家の外に出た。
何かに操られてるように道を歩いてる人々を包丁で刺していった。
それは地獄絵図のようだった。
俺の衣服や道は血に染められていた。
2時間後、俺は警察の拘置所の中にいた。
「俺は何をしたんだ‥。」
黒のお香は人格が極悪になるものだった。
あなたは時に別人になりたいと思いますか?