「駅までお願いします。」
タクシーに真弓と乗り込むと同時に、私は企画書を広げた。
「へぇ、この企画ってけっこう面白そうですね。」
私が視線を企画書に落としたまま言う。
「そうなのよ。それがね、今回の企画で初めてスタイリストさんをいつもの所じゃない所にお願いしてみたの。」
真弓は煙草を取り出しながら続ける。
「で、打ち合わせをしてみたんだけど…。私的にはかなり満足ね。」
私はその言葉に驚いた。
真弓は仕事に厳しい。絶対に妥協はしない事は知っている。だから、余程の事じゃなければこんな言葉は出ない。
真弓は煙草に火をつけると、フーッと1回煙と共に息をついた。
「楽しみですね。」
相変わらず私は視線をかえずに言う。
「勿論絶対に成功するわね。今回のスタイリストさんは男性だけど、女性向けなのに物凄くセンスと腕は良いもの。」
真弓の吸っていた煙草の煙が揺れた。
一瞬、私は瞬きをしながら真弓の方を見て、また同じ場所へ視線を戻した。