現場につくなり、私は真弓に案内されるままついていくと、スタジオの隣の応接間だった。
さっそく今回の企画のスポンサーの面々に紹介をされていた。
「私は撮影につきっきりになってしまうから、しばらくお相手お願いね。」
そう言うと同時に、真弓は私の返答も聞かぬままスタジオへ向かって行った。
スタジオでは、どうやら既に撮影が開始されているようだった。
私の仕事ぶりは、真弓からは『事務的』に見えるらしい。
臨機応変には出来ないが、マニュアルに載っているような事は過ぎるくらい完璧らしい。
私は愛想笑いの下で、自分自身の性格への退屈さを感じていた。
いつもそうなのだ。
ありのままの私は、きっとつまらないものだと思うから。
余計な事はしない。
とびきり極上の喜びはない。
だけど、そのかわり。
立ち直れない程の失敗もない。
私は可も不可も持ち合わせてはいないのだ。
その時、鞄の中の携帯電話が震えた。