『受信メール/1件』
『送信者:相原真弓
ポラ確認で意見が聞きたいから、スタジオまで。』
「少し、失礼致します。」
愛想笑いと共に私は応接間を後にした。
天井のやたら高いスタジオにはたくさんの機材で賑わっていた。
ちょうど入り口の扉を開けて真正面のあたりに真弓の姿を確認し、近づいて行く。
「どう思う?」
真弓が何枚かの候補を説明しながら意見を求めてきた。
私は移動中に目を通した企画書を思い出してみる。
「打ち合わせ通りには仕上がっているとは思いますよ。」
私が本来イメージしていたものとは少し違う感じがしますけど、と言う言葉は飲み込んだ。
真弓が私の『言葉にしていない言葉』を見逃すはずがなかった。
「実は思っていたものとちょっと違うなって感じて。余りにも仕上がり過ぎちゃったかなって。で、さっきまた皆で急遽話し合ってみたのよ。」
真弓が結論を一気に言わない時は、大抵裏があったりする。
「唯が被写体やってくれないかな?」
こんな時は決まって相手に決定権はないものだ。