今まで、彼とクリスマスを祝わない日は、なかった。
今年のクリスマスは、初めて1人ですごす…。
たった一度の過ち。
それだけ私は不器用だ。
街中は、クリスマス一色…。
ネオンが光って、周りには幸せそうなカップルが沢山いる中、私は1人歩いている。
マンションに帰って、テレビの恋愛ドラマなど見る勇気は、なかった…。
ネオンの光りから少し外れた道に入ると、小さな店があった。
こんな所に、店があるなんて…。
中にはクリスマス用の可愛らしいぬいぐるみや、ロウソクなどが並べられている。
何の気もなく、中に入ると中は温かく、ロウソクに火が灯っていた。
『何かお探しですか?』
不意に後ろから声を掛けられ、振り返ると、優しい笑顔のおじいさんが立っていた。
『いいえ。特に探し物はありません。ただ、あまりに綺麗だったので』
おじいさんは、含み笑いを浮かべ、『これを、どうぞ。あなたは、叶えたい願いがありそうだ。』
と、片方だけの大きな靴下をくれた。
私は、それを受け取り家路へと急いだ。
沢山のカップルの中を、ゆっくり1人で歩くのは、寂しかった…。
ベッドに入り、叶うはずのない靴下に願いごとをした。
寝てから何時間たっただろう。何か物音がする…。
ゴソゴソ…ゴソゴソ…
眠い目を無理矢理、開き辺りを手でさわる。
靴下の中に何か入っている…。靴下を片手で持ち、部屋の電気をつけた。
靴下は血で赤く染まっている。中には、心臓が包まれていた。
そう…私の願い事。
《彼のハートを、もう一度ほしい》
そう願った…。
コレは、彼の心臓。
薄れゆく意識の中、店のおじいさんの笑顔が蘇った…。