年末を七日後に控えた12月24日の風が吹き荒ぶ夜のこと巳之吉(みのきち)という若者が江戸の長屋で暖もとれずに震えていた。借金まみれで火鉢の墨も買えずその上お桔(おきち)という娘ともどういう訳か気まずくなりだしてるものだからますます師走の寒さがこたえてくる。
「こんな日は早く寝るに限るか。明日ははええし、今夜はうどんで腹いっぱいになったしな」
そう言って戸につっかえ棒を立てて寝床に向かってくと急にチャリンと音がしたと思ったら障子の穴から冷風が入り込んできた。
「誰だよ。一体!さぶいじゃねえか」
そう言って玄関に戻るとなんと小判が三枚ばかり落ちていた。巳之吉はそのまばゆいばかりの輝きに我を忘れてみいっていた。そして一枚手に取ると
「本当は…番屋に届けなきゃならねえかもしれねえが、背に腹は変えられねえや。方々のツケも今月は大丈夫だしよ…モチ食えるぞう、ヤッター」
巳之吉は小判を手にバンザイするとすぐさま障子にあいた穴をふさいで寝床についた。(続)