三月一日。
僕が死んだ。
理由は交通事故。
呆気ないね、人が死ぬってのは。
−僕はごく普通の高校三年生。
無事に就職も決めて浮かれていた。
僕が就職を決めたのは夏だった。
今は夏休み。
喫茶店でアイスコーヒーをすすってのんびりと時を流れを楽しんでいた。
不意に。
女の子が僕の前で息を弾ませて椅子に座る。
「待たせたかなっ?!」
夏の合宿から付き合い出した彼女がきた。
−一つ年下の下級生だ。
名前は宮田信子。
長く伸ばした髪は艶のある黒い色で。
僕はその髪がとても好きだ。
たわいもない話しで盛り上がり、緩やかに彼女と一緒に時間を過ごす。
季節はすでに冬。
彼女はクリスマスプレゼントに手編みのマフラーを編んでくれた。
店で売っているように綺麗なマフラーではなかったけれど、僕にはどこか不格好なマフラーが気に入った。
そして、卒業式。
僕は急いでいた。
彼女に会うために。
彼女は式が終わったら親の車で帰るといって、それから待ち合わせ場所に向かう。
僕は急いだ。
とっても急いでいたんだ。
信号を渡る。
突然。
周りがスローモーションに動いていた。
悲鳴も聞こえる。
なんだろう…。
僕の体は血を流していた。
あぁ…、はねられたのか…。
ぼんやりと白い車が赤い血が着いているのが見えた。
頭の辺りになんだか柔らかい感触がした。
頑張って顔をあげたけど、長く黒い髪しか見えなくて。
何度も『ごめんなさい』って言葉が聞こえた。
もう僕は、彼女の謝る言葉が聞こえなくなってしまった…。