「いい加減にしなさいよ！あんたら授業中にまで、人の悪口言ってて恥ずかしくないの！？」
彼女は凄まじい剣幕でまくし立てた。
それは雷の如く教室内に轟き、生徒達は麻痺したように、体を強張らせる。
しかし先生は動じた様子もなく、溜め息混じりに言った。
「静かにしろソラ。授業中だぞ」
「その授業は破綻してるじゃないですか、先生。下らない私語に夢中で、ほとんど皆先生の話なんて聞いてませんよ。
そんなこと先生も気付いてるでしょ？」
彼女―ソラは先生に対しても、毅然として言葉を放った。
さすがに先生も、彼女の態度に顔をしかめた。
僕は呆然として、一部始終を眺めていた。
窓外の遥か彼方で雷鳴が轟き、寸刻遅れて僕の耳に届く。と同時に先生の口が開いたとき、ようやく僕は正気を取り戻した。
「出ていけ。今すぐだ」
先生の声は、僕に向けられたものだった。
彼の眼差しは、煩わしいものでも見るように、細められている。
「はあ！？何で彼が出ていかなくちゃならないんですか！？彼は寧ろ被害者じゃないですか！なのに―」
「皆に聞いてみろ」
僕は周囲を見渡した。彼らの視線が絡み付く。
軽蔑と憎悪に満ちた眼差しだ。
僕は席を立った。
ちょうどいい。僕としても、この欝陶しい教室から解放されるのは、至上の喜びだった。
「今日はもう早退します。体調が優れないもので」
静寂の中、僕は教室を後にした。
雷鳴の轟音が耳朶を打ち、僕は気が付いた。
瞼を開けると一面の灰色が視界に埋まっている。
ここは屋上か…。
教室を出た後、何故か屋上に来てしまった。
そのまま何気なく陰鬱な天気を眺めていたら、何時しか寝入ってしまったらしい。携帯の時刻は１３時を過ぎていた。
「よ。起きた？」
屋上の端に、見覚えのある容姿が映った。
寝ぼけ眼を擦ると、そこには、先程の豪傑女ソラが佇んでいた。
「何よ？私は別に昼寝の邪魔はしてないわよ。
じきに降ってきそうだから、そろそろ起こそうとは思ってたけど」
恐らく僕は怪訝な表情をしていたに違いない。
彼女は心外そうに言った。
「お気遣いどうも」
だから僕はそう返事しておいた。
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