会社に戻ると、ほとんどの社員はまだ仕事を続けていた。
「おっ、お疲れ様。」
佐々木課長が、何かのついでのように声をかけてきた。
言葉の後に私の顔を見て驚いていた。
「どうした、吉岡?熱でもあるんじゃないのか?顔が赤いぞ。今日はもう良いから上がった方が良いんじゃないか。」
他人の心配なんて数える程しかした事がないであろう佐々木課長がここまでいう程だったのだろう。
触れなくても鏡で見なくても、顔が赤く熱くなっている事には気付いていた。
佐々木課長の言葉に甘えて今日はもう帰ろう…。
ホワイトボードの文字を消しながらそう決めていた。まるで、今日の出来事をも消してしまうかのように。
しっかりしなきゃ。
今日は私が夕飯を作って亮ちゃんを待っていよう。