それから森山さんはにっこり微笑み、
「だから今は、おばあちゃんのために改心したの」
と言った。しかし、その微笑みは無理しているように少しひきつっていた。
「ごめんね、こんな話されても困るよね」
それからオレらはたわいもない話をした。担任がジャムおじさんに似ているとか、オレが小1のときに犬の糞をふんづけて、揚句のはて迷子になるわで大泣きした話とか…。彼女はいつの間にか偽りでない、心からの笑顔になっていた。
帰り道もそんなくだらない話を続け、オレらは分かれるところまで来た。
「んじゃ、また明日な」
「うん、今日は…その……ごめんね、なんか変な話しちゃって」
彼女のちょっと悲しそうに微笑んだ顔を見て、オレは胸が締め付けられる思いになった。
「…秘密ね、黒田君にしか話してないから……じゃあ」
よくは分からなかったが、街灯で照らされた彼女の頬は少し桃色だったように見えた。くるっとターンして、彼女は家の方に歩いていった。