翌日、会社へ出勤してみると、皆の視線がやけに私に集中していた。
どうやら、昨日の広告写真が仕上がった物を見たらしい。
こういうのには慣れていない。
「大変そうね。」
と私の後ろで真弓がイタズラのように笑いながら、1枚の写真を渡してきた。
「これ、別人みたいよね?」
写真に写っていたのは、間違いなく私のはずなのに、真弓の言葉通り、別人のようだった。
写真の中の私は照れながら優しく笑っていた。
皆、これを見たのか…。
「冗談はやめてくださいよ。」
からかわれるのは好きじゃない。
ムキになる私に、真弓はヒラヒラと後ろ姿で手を振って事務所から出て行った。
それからお昼になる迄の間に、今まで同じ職場にいながらも挨拶程度の言葉から抜け出せないような関係の人たちに、親しげに声をかけられたり、携帯電話の番号を聞かれたりした。
私はうんざりしながら、食堂へ向かおうとして財布に手を伸ばした。
その瞬間、ハラリと何かが床に落ちた。
真弓のやつ…。
心で真弓のイタズラ心にケチをつけながら、床に落ちた別人の私が写っていた写真を拾いあげる。
「やっぱり、私に見えない…。」
私はそう呟きながらも、なるべく気にしないように、デスクの引き出しの奥の方に写真をしまった。