高校2年生の始まり。
毎年学校にいるはずのこの日
私はなぜかコンビニスタッフの制服を着てレジに立っている。登校中ここに寄る学生達は不思議そうに私を眺める。
完全に遅刻と分かってたけど、チャイムが鳴る5分前に切り上げる。
自転車にまたがり、ゆっくりとペダルをこいで曇ひとつない青空の下学校に向かう。
門の前には、がたいのいい体育教師が2人待ち構えていた。
1学期早々、遅刻の数字がつく。
歩いたことのない2年生の廊下に足を踏み入れる。
みんなとっくに教室に入ってクラスの子とにぎやかに話してる。私は一人、それぞれの教室のドアに貼ってある自分の名前が載ったクラス表を捜した。
1組から順番に捜していき、3組の前に立ちはだかった時、そこにいた太っている中年女性の先生と目が合った。お辞儀をする間もなく先生はすぐにドアを開け、「あなた清水さんよねっ?こんな日に遅刻するなんて、一体どうしたの?!」
と言い、笑っているのか怒っているのかよく分からない表情を浮かべた。どうやらここが私の新しい教室らしい。バイトしてたなんて言ったら、みんなにも印象を悪くするだろう。
「寝坊です。」
わざと目を細めて言った。
先生は溜め息をついて私の席を指差し背中を優しく押した。
席の方を向くと、いろんな人と目が合う。比較的知らない顔の方が多い。うちのクラスは、なんだかすごく静かで、私が自分の席に向かって歩く音が教室中に響くぐらい。
「…シケてんな。」
そう思いながら鞄を机の横にかけて座った。
この日私はこのクラスの中に、既に大きな孤独を抱えている人がいたなんて、考える由もなかった――。