やぁ、僕は手長ネコ。
普通のネコとはちょっと違う。
なんたって、手が長い。
どこまでだって手が届く。
なんだって器用にこなす。
バランスを考えて二足歩行だけどね。
今日は僕の夢の話さ。
突然だけど、僕には夢があるんだ。
夢はね、空が真っ暗になったときの、あの大っきな星に、手が届くことさ。
毎晩みたいけど、眠いから毎晩見れないや。
そんな、ある星を見てる日にね。
たまたま起きてた、友達の亀さんがやってきたんだ。
お昼寝が多かったのかな。
手も、足も短くて、ゆっくりしか歩けない亀さんが言ったんだ。
「あの星かい?君なら届くよ?」
本当かな?長い手を上げれるだけ上げて、僕は驚いたよ。
さて、お初にお見せします。へへっ、これは僕の愛車さ。
愛車って言っても、原付だけどね。
車は、足が届かないんだ。
今から、亀さんが教えてくれた所に行くんだ。
亀さんは眠そうだね。
森を越えて、やって来たよ。沢山の木たちと、おっきな湖がある所に。ここかな?
「ここだよ?」亀さんがいったよ。
でも、相変わらず、あの星は、おっきくて遠いな?
「大丈夫だよ」亀さんがいったよ。
わかんないや、腕だって組めちゃう長い手だけど、どうしたら届くんだろう。うーん。
「ふふっ」亀さんは笑いながら教えてくれたよ。
「こっち、ほら」
本当だ。長い手が届いたよ。
ちょっと、冷たいけど、あのおっきな星に触れたよ。
あんなに遠いものだったのに、こんなに近くで触れたよ。
冷たいけどね。
手を払って愛車にのって、眠たいから帰ったよ。
でも、ずるいや。亀さんはもっとあのおっきな星に近づいてたな。
手も長いし、泳ぐ練習でもしようかな。
明日にしよ。眠いや。
おやすみなさい。
月はそんなネコを見て、
「太陽さん、もうちょっと…」
沈むのを少し遅くした。