やぁ、僕は手長ネコ。
とっても手が長いネコさ。
なんだって届いちゃう。
この前は、あの星だってさわったんだ。
たまに触りに行くから、たまに寝不足さ。
僕の自慢は、この長い手。
どこまでも、届いちゃう。
なんだって、届いちゃう。
ほしいものが、とれちゃうんだ。
すごいでしょ。
ほら、うーんと、伸ばすと届くんだ。
高い木の上、岩の間、どこだって届くんだ。
遠いところの物をとる手さ。
でもね、小さい頃ね。
お母さんは「私たちの手はね、本当に大切なものを、守るためと、あっためるためにあるのよ。」って言ってたんだ。
わかんないや。
長いんだから、遠くのものをとらなきゃ。
寒いんだったら、遠くの木とか、枯葉とか集めて、あったまればいいじゃないか。
よーし、とるぞ。
あっちの方に沢山あるぞ。僕ならとれる。
うーん、うーん、もうちょっと、もうちょっと。
うーん、うーん、もうちょっと、もうちょっと。
僕の手なら届くはず。
そんな時にね。
「うわぁっ…」
亀さんが、ギリギリまで近づいた僕の足で、崖から落ちちゃったんだ。
真っ暗な、真っ暗だけど、あの星もない所に。
久々に、涙がでたよ。
お母さんや、お父さんが、星になった時みたいに、涙がでたよ。
そんな時に、真っ暗から声がしたんだ。
「おーぃ、助けて。」亀さんだ。
亀さんは崖のくぼみに、いたんだ。
これまでで、一番手を伸ばしたんだ。
ううん。
伸びてくれたんだ。
届いたよ。
僕の長い手と、亀さんの短い手が、届いたんだ。
一杯、精一杯、僕は亀さんを抱きしめたんだ。
ごめんね。
「ううん、ありがとう」
気付いたんだ。
僕の自慢は、近くにいる友達を遠くまで守れることだって。
あと、あの時の、暖かさはどんな春より暖かいって。
二人でつくった熱は、太陽をも、うらやむむものだった。