手長ネコとカメと熱

無色楽天  2007-12-22投稿
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やぁ、僕は手長ネコ。

とっても手が長いネコさ。
なんだって届いちゃう。

この前は、あの星だってさわったんだ。

たまに触りに行くから、たまに寝不足さ。

僕の自慢は、この長い手。

どこまでも、届いちゃう。

なんだって、届いちゃう。

ほしいものが、とれちゃうんだ。

すごいでしょ。

ほら、うーんと、伸ばすと届くんだ。

高い木の上、岩の間、どこだって届くんだ。

遠いところの物をとる手さ。

でもね、小さい頃ね。

お母さんは「私たちの手はね、本当に大切なものを、守るためと、あっためるためにあるのよ。」って言ってたんだ。

わかんないや。

長いんだから、遠くのものをとらなきゃ。

寒いんだったら、遠くの木とか、枯葉とか集めて、あったまればいいじゃないか。

よーし、とるぞ。

あっちの方に沢山あるぞ。僕ならとれる。

うーん、うーん、もうちょっと、もうちょっと。

うーん、うーん、もうちょっと、もうちょっと。

僕の手なら届くはず。

そんな時にね。

「うわぁっ…」

亀さんが、ギリギリまで近づいた僕の足で、崖から落ちちゃったんだ。

真っ暗な、真っ暗だけど、あの星もない所に。

久々に、涙がでたよ。

お母さんや、お父さんが、星になった時みたいに、涙がでたよ。

そんな時に、真っ暗から声がしたんだ。

「おーぃ、助けて。」亀さんだ。

亀さんは崖のくぼみに、いたんだ。

これまでで、一番手を伸ばしたんだ。

ううん。

伸びてくれたんだ。

届いたよ。

僕の長い手と、亀さんの短い手が、届いたんだ。

一杯、精一杯、僕は亀さんを抱きしめたんだ。

ごめんね。

「ううん、ありがとう」

気付いたんだ。

僕の自慢は、近くにいる友達を遠くまで守れることだって。

あと、あの時の、暖かさはどんな春より暖かいって。

二人でつくった熱は、太陽をも、うらやむむものだった。



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