お産を三回経験した光子だが、その子育てはすばらしいものだった。
寝る間もおしんで、おっぱいをあげ、下の世話をし、毛繕いをし、少しでも動きまわると連れ戻し、常に子猫を監視し、それは期間は短いものの、人間より勝るようだ。
光子の子育てをみて、自分の母親を思う…
青森を中卒で、当時ほとんどの15才が上京した集団就職。
19才で妊娠し、行方不明となった。祖母は自分の故郷である東京のつてをたより、何度か上京し、訪ねた先で母親と働かない男、そして私を見つけた。
経済力のない若い夫婦に子育ては無理だろうと、私をひきとり、青森に連れ帰った。
私はおかげで幸せに育ったが、自分が母親になって、昔からぼんやりと抱いていた疑問が、はっきりとうきあがった。
自分の腹で10ヶ月も育て、死ぬ苦しみで産んだいとおしい我が子を生活の為、又は男の為に簡単に手放す事ができた人。
自分の経験からしても、光子の子育てをみても、母親の決断は納得がいかない。男より、子を選らんで欲しかった。理由はなんであれ。子供の頃から、今になっても恨んではいないが、私の憂鬱の原点だと思う