『松田君、その色いいんじゃない?松田君のイメージだよ。スーツ姿の松田君も素敵ですよ。』
大きな目をくりくりさせて彼女が言った。
『そぉ〜お?!俺は元々カッコイイから。‥なぁ〜んてね。』
『あはは‥。』
へぇ‥。彼女は笑うとえくぼが二つ出るんだ。
昨日は気が付かなかったけど、
やっぱ可愛い‥。
『孫にも衣装って言うじゃん。』
俺は照れ隠しにそう言った。
『自分で言ってる。そんな事ないよ。
松田君カッコイイ顔してるし。』
勿論、社交辞令だとは思ったが彼女に褒められて悪い気はしなかった。
『ハハハ。ありがと。お世辞でも嬉しいよ。』
そんなたわいない話をしながら、俺は彼女に見立ててもらったスーツを試着し、購入して店を出たーー。
『あたしの家は東区なんです。地下鉄乗りましょうか。』
『地下鉄なんだ?車には乗らないの?』
俺の不躾な質問にも彼女は笑顔で答えた。
『乗るのは夏場だけ。冬道はやっぱり怖くて。あたし実家は小樽なんです。
札幌は交通量が多くて、あたしの運転じゃ無理。』
『札幌に来てまだ日が浅いとか?』
『うん。まだ2年位かな。高校卒業してすぐ札幌に住み始めたから。』
彼女は俺の誘導尋問にも素直に答えてくれた。
『へぇ‥。じゃあ木下さん、まだ21位?俺よか4つも若いじゃん。』
『うん21です。
松田君、あたしより4つもお兄さんなんですね。どおりで落ち着いてると思った。』
『ハハハ。俺落ち着いてなんてないよ。落ち着いてる人がネットカフェ難民なんてしないでしょ?』
思わぬ彼女の言葉に俺は気恥ずかしくなった。
『あは。そだね。』
そう言って彼女は笑った。
地下鉄の乗り場まで歩くのに何分掛かったろうか。
彼女と話している時の俺はとてもテンションが高く、凄く饒舌になる。
元々無口な方だと思っていた俺にとっては、意外な自分発見だった。
4つ目の駅に着くと、俺達は地下鉄を降りたーー。