次の日の夕方、巳之吉 (みのきち)と為吉(ためきち)はお桔(おきち)達の食卓に呼ばれていた。そこには昨日養生所に運んだお梗(おきょう)もいる。
「さあさ、二人共昨日はよく助けてくれたね、まずは一杯やっとくれ」
「へい、ありがとうございます。しかし旦那これは一体どういう訳で…」
巳之吉は旦那の酌をうけながらなにやら狐につままれたような気分だった。それにお桔とお梗をみていると生地の色が紅白それぞれ違う色の着物を着ていなければどちらがどちらかわかりかねるトコであった。
「まぁお前達に恥をさらすことになるが、私達の子はあのとうり娘二人でしかも双子だ。年をとってからやっとできた子だし、二人共目に入れても痛くはない位だった。しかしいくらなんでも『縁起が悪い』ということも一方ではあり、結局お梗は泣く泣く木更津の弟の所で育ててもらうことにしたわけじゃ」
そしてお梗が燗を持ってきて巳之吉に酒をついでから話始めた。
「昨日はありがとうごさいました。私のためになけなしのお金を診たてのためにだしてくださったそうで…」
「なぁ〜に、いいってことよ。そう気にするなぃ」 「これはうっかりしてた誰か…」 (続)