何回目かのベルが鳴る…。
電話に出たのは、肥後君だった。
「あれ?吉宮?どしたの!」
「どしたのって!ゆぅから聞いたからかけたんじゃん。なんか、話あるって」
「あぁ。あれね。あのさ、俺、今からまさに、バイトだから、また掛けなおすよ。ケータイ、まだ教えてなかったっけ?」
「知ってますけど〜?あんた、こないだ、彼女にケータイ見られて喧嘩したっつってたじゃん!一応、気、使ったんですけど…」
「あはは!そっか。じゃ、8時頃、電話するわ!」
不思議だけど、なんだかワクワクした。
なんだろう…。
バイトの事…?人手不足?
そんなくだらない事を、肥後君のおかげでしばらく考え、そして、しばらくうたた寝をした。
嫌な事があった時も、楽しみがある時も、皮肉だけど、どっちも時間の流れは遅く感じるもんだね…。
時計がやっと8時を回った時、やっと電話が鳴った。
「あ!俺!ごめんな。あのさ、いきなりなんだけど、お前、うちのバイト来ない?人手不足って言うかさ、うち、珍しいとこなんだよね〜。シフトないし。完全自由制。いいっしょ?来週、求人出すみたいで。よかったら明日、見学こねー?」
「え?なんで私なわけ?しょーもなぃ」
予想はしてたけど…予想通り。
「バイト先から家近いの…お前だけだもん」
あっけらかんとした肥後君の答えに拍子抜けする。全く…こいつは昔からこんな奴だ。
でも、今日1日、ずっとひとりぼっちだったら、きっと明日の事なんて考えたくもなかった。
事情を知らないゆぅと肥後君だけど、だからこそ、その明るさに感謝する。
「悔しいけど明日も、私は暇です。だから…行ってみよっかな。フフッ」
「そっ!じゃ、明日、お前んち、迎えに行くよ。じゃ。」
あ…。で、結局どんな仕事なんだろ?肝心な事、なんにも聞いてないや。
ほんの少しウキウキしながら、もう一度眠りについた。