お転婆・二
「おーい、ちと女物の服を一式くれんかい」
竹の防護柵の外で白虎にナニやら言い含めていた老仙人が呼び掛けてきた。
皆を驚かせない様に、白虎と共に柵の外に留まっていたのだ。
「え?いいけど…‥お爺ちゃんが着るの?」
「プッ!あはは、そんな訳ないだろ? あの虎が着るのさ」
真顔で聞き返すイーズに山際晋が教える。
「はぁ?… 白虎が女物の服着るってェ?」
ハテナマークを絵にしたような表情のイーズ。
「こんにちは、あたしは、そうねぇ…やっぱりビアンカ(白、の意)でいいや。 ビアンカって呼んで、イーズ」
「う…‥ え、ええ、こちらこそヨロシク…」
珍しく狼狽していたイーズの様子を見て
そういえばコイツ、お化けの類は苦手だったな‥
と晋は思い出していた。
「ほい、これはお前さん達に土産じゃよ」
白髭のルー仙人がさっと手を振ると、手首のブレスレットが離れ、晋とイーズの手首にピシッと巻き付いた。
「《呂の名において命ずる》と念じれば龍の力を貸し手くれるぞい。 ま、頑張ってくれや、ウッホッホ」
その言葉を最後に、仙人は長い髭をなびかせながら、雲に乗っていずこともなく去っていった。