待ち恋

けい  2007-12-24投稿
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僕は分かっているんだよ。ナミが僕じゃない誰かを好きなことを。それでも僕は信じているよ。ナミがこの狭い真っ暗な箱の世界から助け出してくれるのを。僕は待ち続けているよ。
2005年11月19日。
あの日は泳ぎだしたくなるくらい、淡い水色した空が広がっていたね。僕はただ何となく、いつものように、太陽が東から西へと歩んでいくのを見上げながら、1日を終えようとしてたんだ。でも、あの日は僕にとって、この世に生まれた日よりも大切な日となったんだよ。だって、ナミに出会えた日だから。ベージュ色のジャケットにベージュ色のマフラー、黒い長い髪のナミに僕は一目ぼれしたんだよ。
2005年クリスマスイブ。
初めてナミと僕がデートをした日。ナミは人ごみをかきわけながら、どこまでも続くイルミネーションに心踊らさせていたね。僕はそんなナミの傍にいられて、とても幸せだったよ。
2006年3月
桜前線のニュースを耳にするようになった頃。僕とナミの関係は、桜前線よりも早く散り初めてしまったね。僕はあの時初めてナミに暗くて狭い箱の世界に閉じ込められてしまったんだ。それでも、僕は待ち続けていたんだ。ナミがこの暗くて狭い世界から救い出してくれることを。
2006年クリスマスイブ。
一年前のあの時と同じように、僕はナミの傍で、眩しい程のイルミネーションを眺めていたね。ナミは真っ赤な可愛らしいコートで、誰よりも輝いていたよ。
2007年1月17日。
僕がナミといっしょに出かける事はなくなった。いつも玄関先でナミを見送り、ナミを出迎えるだけの関係になってしまったんだ。そして、また桜前線よりも早く、僕は暗くて狭い箱の中に閉じ込められてしまったよ。
今日は2007年クリスマスイブ。
僕は暗くて、狭い箱の中に閉じ込められているよ。僕は分かっているんだ。ナミがもう他の誰かを好きになってしまったことを。それでも僕は信じて待っているよ。ナミがこの暗くて狭い箱の中から救いだしてくれるのを。僕は型崩れのブーツ。今年流行りの色も形もしていない。それでも、僕は信じているよ。今年のクリスマスイブもナミが僕を履いてくれるのを。
2007年クリスマスイブの夜。
「ナミ、今年もイルミネーションは綺麗だね」

        終わり



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