最後の歌?

雨津  2006-04-05投稿
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屋上で一人の少年が仰向けに寝そべって、ただ空を眺めている。昨日までの5日間とはうってかわって、今にも雨が降りだしそうな、灰色の空が広がっていた…。どうやらこいつは授業をさぼったらしい…。ここは馬鹿が集まる男子高の屋上だ。少年は風に前髪をそよがせながらボソリと言った…「…行こう。」 その日の放課後茜はあのボロアパートに向かった。維津歌は多分いないだろう…だけど、このままではなんだかむしゃくしゃする。 それに何より、会って直接、維津歌に聞きたい事がある。あの日から自分の中でずっと引っかかっていた言葉…茜が路地にさしかかったその時、とうとう灰色の空が涙を流し始めた…「あーぁ、傘持ってねぇよ…」どしゃ降りだった。そうまるで初めて彼女に会ったあの日のように…「バシャっ」茜が勢いよく濡れた階段を上がり始めた。「カンカンカンカンっ!!」…「維津歌…」茜がボソリと言った…「久しぶりだね…」茜の視線の先に立っていた少女が言った…維津歌だ。…「ごめん…」茜が言った…。「あのさ…」「あの…」茜が何か言おうとしたが、「あの…」何も言葉が見つからない。それは彼女も同じだった。「私…あれ、その…」沈黙が続く…「会いたかった!!!!」沈黙に我慢できなくなった維津歌が勢いよく茜に抱きついた。「会いたかった!!!」「会いたかった!!!」維津歌は何度も同じ言葉を繰り返し、茜をきつく抱きしめた。二人は上から下までビショビショだ。維津歌も傘を持っていなかった。「病気って…ホントなの??」ずっと黙りこんでいた茜が口を開いた。「もう、あんたに会うつもりじゃなかったんだけど…それがずっと気になってたから、だから…直接聞きに来た…」茜が真っ直ぐに維津歌を見つめた。「ホントだよ。」維津歌が言った「何の病気??」茜が聞いた…「二重人格♪あと、私が出てくるのは雨の日だけ♪」維津歌が無邪気に言った。さっきまでしんみりしていたのに、あのクスクス笑いをしている。「驚いて言葉もでない??」維津歌が続けた。彼女の言う通りだった。茜はまた黙りこんでいた…「あっはは!そういうとこが可愛いくて仕方ないんだよね!!」維津歌の言葉に茜が真っ赤になった「何なんだお前!!」茜が維津歌に背を向け帰ろうとした…「待って!!」維津歌が泣きそうな顔で茜の腕を掴んだ、そして必死に訴えた……。



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