『ハハハハハハ‥。木下さん最高!!
でもね、このドリア、美味いよ。美味い。俺、グラタンとかドリア大好きなんだよね。このホワイトソース系が。』
彼女に失礼かなとは思ったが、おかしくて、堪えきれずに笑ってしまった。
『‥‥‥。』
『木下さん、もしかして天然ボケですかぁ〜?!』
俺はちょっと悪ノリしてしまった。
良く小学生位の男子が、自分の好きな女の子をわざとからかって苛めてしまう心理に似ていた。
『‥‥‥。』
彼女は俺の向かい側に座ったまま、俯いて黙ってしまった。
『木下さん?!怒ってるの?!』
俺は、ちょっと悪ノリし過ぎたかなと後悔した。
まずいな‥。怒らせちゃったかな。
『‥‥あたし、松田君の為に苦手な料理頑張ったんだ。』
俯いたまま、ぽつりと呟くように彼女が言った。
『ごめん、木下さん。俺、そんなつもりで言ったんじゃなくて‥。このドリア‥いや、グラタンが凄く美味しくて‥。一気に食べちゃったんだ。だからその‥、つまり‥、木下さんは良いお嫁さんになるなと‥‥。』
言えば言う程、言い訳がましくなってしまった。
非常に気まずい状況を作ってしまった俺。
『‥‥‥。』
黙ったままの彼女。
ぽつんー。
俯いている彼女の目から涙が落ちた様に見えた。
泣いているのかなと思ったー。
『ごめん!!ごめんね木下さん。ごめんなさい!!』
俺は夢中になって謝った。
彼女にだけは嫌われたくないと思った。
し〜んと静まり返った二人きりの部屋ー。
どうしよう‥俺。彼女を傷付けちゃった‥。
自己嫌悪に陥りそうだったその時ー。
『うそだっぴょ〜んっっ!!』
俯いていた彼女が再び笑った。
昨日初めて見た、あの飛びっきりの笑顔でー。
『あはは‥。わ〜い。騙された、騙された!!』
手を叩いて喜ぶ彼女。
『まいったな‥。』
俺は内心ほっとした。
ほっとしたと同時にまた胸がキュンと苦しくなったーー。