そこは深い海の底。
シルバーに輝く大きなお城が一際目立っていて、その内一つの窓からは長い髪の女の子の影が見える。
「ふふっ♪今日も艶々」
ドレッサーの前で丁寧に髪をブローしている彼女の名前はマリアラーネ。
年は16〜18くらいだろう。
何故、彼女がこんな所で呑気に髪なんかを梳かしているかと言うと…言うまでもないが
人魚
だからだ。
もちろん下半身は鱗で埋め尽くされている。
「早く行こうマリア!」
と、隣で尾びれをばたつかせているのが、友達のシュリー。
シュリーは人魚ではなく魚だがマリアラーネの唯一の友達かもしれない。
と、言うのにも訳がある。
マリアラーネの美貌は中々のモノだし、お城の姫と言うだけあって小さな頃から甘やかされて育っている。
その為、自信過剰にワガママなのである。
「ん〜!今日もか・わ・い・い♪」
シュリーの問い掛けを無視して両手で頬を包み込むと一人うっとりするマリア。
「もーわかったからっ。マリアが世界一可愛い!」
シュリーの呆れながらの発言に、マリアは満足気に笑うと部屋を後にしたのだった。
城の外には三人の人魚が大きな貝に座って会話を楽しんでいる所だった。