二人が気持ち良く歌っていると…突然、後ろで気配がした。
ポチャンッ!!
慌てて岩の影に隠れる…が見られてしまったようだ。
「あ、待って…!」
浜辺から声がして、影からそっと覗いた。
マリア達の目に映ったのは人間…。
この世で一番恐ろしく、汚い生物…の…はず。
が、貴族を思わせる綺麗な顔立ちの彼は
「その…続きを聴かせて貰えないだろうか?」
と優しく声をかけて来たのだった。
今まで自分が一番美しいものだと思っていたマリア。
こんなに綺麗な人間がいるものなんだと、少しばかり見とれていた。
そんなマリアを見て、早く行こう!…と尾びれで突くシュリー。
だが、マリアは岩から少しばかり姿を見せると、続きを歌いだしたのだった。
〜♪…〜♪
マリアの歌声に、シュリーも人間である彼も一言も発せず聞き入っていた。
その空間だけがゆっくり時を流れ、静かに過ぎ行く…。
やがて、マリアが歌い終わると…浜辺から拍手が聞こえた。
「素敵な歌声ですね。…君、名前は?」
マリアはちらりと彼を見ると黙った。
「あぁ、申し訳ない。人に名前を尋ねる時はまず自分から…ですね」
綺麗に頭を下げると続ける彼。