「なんか、加藤さんとちゃんと話すのって、初めてな気がするんだけど、俺のこと避けてる?」
いきなり顔を覗き込まれてびっくりした。
心臓がドキドキしている。
「そんなことないって!」
慌てて言うとダイキはまた悪戯っ子みたいな笑顔になった。
「これ以上イジメるのはやめとくわ!気ぃ付けて帰れよ!」
そう言ってダイキは席に座って寝る準備をし始めた。
「バイバイ!」
私はあわてて教室を飛び出した。
緊張がとけた脱力感で、帰り道がいつもより長くかんじた。
空は夕焼けから、夜空に変わろうとしている。
ダイキはまだ教室でミカを待っているだろう。
幸せそうな顔をしながら。
ミカの心が先輩に移りかけているのをしらないまま。