ばいばい、浩介 ?

木村よし  2007-12-25投稿
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さよならを言いたくなくて。


私は、嘘をつきました。



「え、お前、転校するんの?!」


浩介は、少し驚いたように、背もたれに預けていた体をがばりと起こした。


「あ、うん」


「マジかよぉ。全然知らなかったし。で、いつ引っ越すわけ?」


「家を出るのは来週だけど…準備とかがあるから、学校は、今日が最後、かな」


私は、なるべく雰囲気が暗くならないように気を付ける。


「は?!今日最後?!」


私の答えにがっくりと肩を落とす浩介。


私は、そんな浩介と、目を合わせることができなかった。


終礼の始まりのチャイムが鳴って先生が教室に入ってくると、私は後ろを向いていた体を前に向き直した。



浩介とは、一ヶ月前初めて言葉を交した。


たまたま、席が前後になって。

積極的に話しかけてきてくれる浩介とは、すぐに仲良くなれて。


高二になって、初めて恋をした。


毎日が楽しくて。


浩介の笑顔が大好きだった。


でも。


私はもうすぐ、東京の大病院に入院する。


生まれつきの心臓病が悪化していて。


もう、いつ退院できるかさえも、分からないらしい。


だから。


だから、今日が浩介との、本当のさよなら。


でもね、私は弱虫だから。

浩介に本当のことなんて言えない。


さよならを、どうしても、言いたくなかったから。


先生が終わりの挨拶をして、最後の学校が終わる。


それはいつもと、少しも変わりのない日常だった。


私は、浩介に「またね」とだけ言うと、鞄を持って廊下へと出た。


歩き成れた賑やかな廊下をゆっくりと歩き、靴を履き替えて校舎の出口を抜ける。


もうすぐ十一月の外は、やっぱり少し寒かった。


「美保ー!」


橙の空に、私を呼ぶ声が響く。


「浩…介…?」


振り返れば、上靴のまま走ってくる浩介の姿が。


「はあ…はあ…おま…ほん、と…待てって…」


私の前まで来ると、浩介は弾んだ息を整えた。




『ばいばい、浩介 ?』に続きます☆


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