「どうしたの?そんな走って…」
「お前に、まだ言ってないこと、あったから」
そう言って、浩介はゆっくりと頭を上げた。
二人の視線が、絡まる。
「好きだ」
何限目かのチャイムが、静かに響いた。
「お前のこと、ずっと好きだった」
長い影がゆらりと動く。
「浩…」
「あ、返事はさ、また今度でいいから」
言いながら、浩介は恥ずかしそうに頭を掻いた。
「じゃ、またな」
最後に浩介は、いつもみたいに明るく笑って。
ゆっくりと、校舎の方へと歩き出した。
夕日の色に染まるその背中が、段々と小さくなっていく。
涙が、知らない間に溢れていて。
瞬きするたびに、ボロボロと止まらなくて。
ねえ、浩介。
もう、次なんて無いかもしれないんだよ?
なのに。
それなのに。
「こうすけー!」
私の大きな声が、乾いた空気によく響いた。
ずっと遠くにある浩介の背中がビクってなって、こちらに振り返る。
「私もー、ずうっと浩介のことー、好きだったよー!」
また、きっと会える。
いつになるかは分からないけど。
でも、きっとまた会える。
そう、信じてみるから。
私、頑張るから。
「浩介ー!」
だけどそれまでは。
「ばいばーい!」
私はそう言って、笑顔で大きく手を降った。
おわり☆