私立k学院生徒会長・九重モエは先会長の粛清・監視路線への抵抗運動の中から選出された。
しかも入学したての一年生で―この点、梅城ケンヤと一緒だ。
だが、思想は大いに異なる。
彼女の掲げた理想はあくまでも《融和と寛容》であり、イジメ撲滅の旗印の下最後の一人までとことん処刑して回る梅城ケンヤの改革派とは真っ向から対立している。
だが、両者は一度は握手を交し共に新しい学校を創ろうと誓い合ったのだ。
盟友にしてライバル―\r
実力を認め合っているだけにその分油断が出来ない―\r
今やそれぞれの勢力の巨頭にまでのし上がった両者の関係は実に微妙かつ複雑だった。
身長145cm・体重38kgと、穏健派と言う巨大派閥を率いる身にしては儚いまでに小柄だ。
だが、九重モエはこの年にて合気道7段・体格が二倍以上の大男、三人ががりでも彼女には敵わない。
既にこの時代ではほとんど見られなくなってきたセーラー服にスカート姿。
そして、何よりも彼女のトレードマークと化しているのが、髪の後ろに結わえた大きな真紅のリボンであった。
久々に直に合ったがこんなにも小さい人だった事に今更ながらに驚く。
だが―\r
この小さな体の中の人はとてつもなく巨大だ―\r
港リリアは赤いリボンに飾られたまだあどけなさの残る顔を眺めながら、そこに宿る真価を見逃しはしなかった。
『第三中学校生徒会は貴校及び穏健派との和平を望んでいます』
『それは結構―いかなる形でも平和は望ましい事ですわ』
港リリアの申し出に、九重モエは微笑で応えた。
少なくともその微笑に裏や含みはないみたいだった。
『それは良かった。では細部の詰めはお互いの実務者同士に委せて、私たちは引き続き本題について話し合いませんか?』
すると、港リリアは、引き連れて来た交渉団の中から、渉外委員長を呼び出した。
『ここにいる島村ジュンが我が方の担当です。今までの両校の緊張問題は彼とそちらの同格者との折衝で解決を計りましょう』
『異存はありませんが…』
九重モエは少し戸惑った。
港リリアの言うことは筋は通っている。
だが少し結論を急ぎ過ぎているきらいがあったのだ。
それも不自然に―\r