真夏。
蝉の鳴き声と太陽の暑さが鬱陶しく感じてしまう季節。
もう夕方だと言うのに、日はおちずにまだ外は明るかった。
「唯と飲みに行くなんて久しぶりよね。」
そう言った、会社の同僚の真弓と二人肩を並べて会社を後にする。
「あんまり遅くまでは無理ですけど、たまには良いと思います。」
私は憎まれ口をわざとたたく。
「最近さぁ、唯、綺麗になったよね。」
真弓は私を見てニヤニヤしている。
「何もかわってないですよ。」
私は笑って答える。
その時だった。
会社から出て間もなくの辺りに、遠目でも綺麗な人だと認識できるくらい、とても綺麗な女の人が立っていた。
私達と彼女がすれ違いそうになった時、その綺麗な彼女のであろう声が聞き慣れた名前を呼んだ。
「唯さん…？」
私達が振り向くと、彼女は一度小さく頭を下げた。
「唯さん。あなたにお話しがあるのですが…。」
彼女は目にたくさん涙をためて、我慢しているようだった。
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