驚いたマリアは手を大げさに振るいサイファが近づくのを拒んだのだが、彼は微笑むと
「構いません」
と歩み寄って来た。
と、その時―\r
「サイファ様―?」
幸か不幸か、女性の声がして彼はマリアから目を逸らした。
その隙に再び姿を隠すマリア。
「サイファ様、こんな所にいらしたのですね。…一体、何をなさっているのですか?」
「ユラ姫」
煌びやかなドレスを纏った女性がサイファの前に姿を見せる。
「あ、あぁ。何でもありません…」
サイファは持っていた髪飾りをポケットにしまうと女性の立っている浜辺へと戻って行った。
見合いの途中に抜け出したのをすっかり忘れていたサイファ。
「サイファ様、ワタクシといてもつまらないですか?」
ユラ姫と呼ばれた彼女が口を開いた。
「そんな事はないですよ」
サイファは即答するが
「…では、ワタクシと一緒になっていただけますか?」
ユラ姫が彼を見つめる。
サイファは目を逸らすと頭を下げた。
「申し訳ない…。ユラ姫はとても美しいし、会話をしていても楽しい。全く申し分ないのだが…私が…」
「……」
無言のまま言葉の続きを待っているユラ姫に、サイファは重い口を開いた。