プロローグ
「遊ぼうよ。ねえ、私ここにいるじゃない。」
教師生活七年目。現在の中学校に赴任したのは二年前。いまだにいつも頭の中にあの言葉が伝えられてくる。
もう済んだことだ。私には最初から関係ないことのはずだ。
一、少女
「おーい、そろそろ授業始まるぞー」
私の言葉に反論するかのように、女子生徒がトイレの前で騒いでいる。
「どーしたんだー?」
「トイレに小学生くらいの女の子がいたんですよー」「気のせい、気のせい。ほら、授業いくぞ」
そう。うちの学校には度々幽霊らしきものが目撃されるという噂がある。どこの学校にもありがちな噂だ。
しかし、実は噂だけでは済まないのだ。現に騒いでいた生徒の隣には少女が笑顔で立っていた。残念ながら、前々から私にはこういったたぐいのものが見えてしまう。騒ぎを大きくするとやっかいだし、一般的な大人はどうせ信用しないので何も言わないでいる。
さっさと行けと言いながら私も授業へと向かった。
あの少女が懐かしむ目でこちらを見ていたことにも気付かずに。
「なんとも、女子はあーゆーの好きですね〜」
同僚の堀田先生があきれ顔で言う。とは言う彼女もよく、学校で霊を見たとか、K先生の後ろに女性の霊が見えるとか言う、霊信者だ。
「生徒が見たなら、見たんでしょう。」と受け流しながら授業へ。
私の授業場所となる体育館に入るとまだ先程の続きを話している。面倒だと感じながらも話しを聞く。
「体育館のステージにさっきの子供がいたんです。」 ほぅ、よく見えるなと心から感心しながらも授業は進める。なぜあの子が今の学校にいるのかを不思議に思っておくべきだった。