紙飛行機‐いつか見た空へ

ゆの  2007-12-28投稿
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〜プロローグ〜

時刻は六時を過ぎた頃。ある春先のことだった。
普段は誰もいないはずの、夕日が差し込む礼拝堂の中で、ひとりの少女がたたずんでいた。
彼女の外見はとても幼く、僕と同い年か、あるいは年下か、ぐらいに見える。
服装は、全体的に真っ黒で、なんだか不思議な感じがする。
そのロングスカートも、大きな帽子も、腰まである長い髪も、全てにおいて黒。
格好から見るとシスターのようにも見えるが、そうでないことを僕はよく知っている。
頭の両側にはぬいぐるみのようなうさぎの髪飾りが結ばれていて、それが彼女をより幼く見せているのかな、と思えた。
うさぎの少女もこちらに気付いたらしく、小さく頭を下げ、微笑んだ。
「あら、こんばんは。珍しいですね。ここに人が来るなんて」
少女が澄んだ声で、言った。それはこちらのセリフである。
「…あなたはここで、なにをしているんですか?」
今度は僕が言った。
「あら、君はここの関係者なんですか?」
質問を質問で返された。底が見えないので、仕方なく僕は答えた。
「まぁ、一応…。ここに住んでいる者ですが」
「そうなんですか?ここで人に会うのは初めてなんで、ちょっとびっくりしましたよ」
それもこちらのセリフである。
「で、あなたはなにをしているんですか」
もう一度、聞いてみる。無駄な気もしたが、今度は少女も答えてくれた。
「ああ、ごめんなさい。…実はですね、人を待っているんですよ」
要するに待ち合わせか。こんな何もないところを待ち合わせ場所に設定するなんて、とんだ物好きもいたものだ。

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