彼の恋人

高橋晶子  2007-12-30投稿
閲覧数[243] 良い投票[0] 悪い投票[0]

突然の連絡だった。
夜10時過ぎになって、文化祭中止の連絡網が博文の自宅に回って来た。電話の声はクラスの女子生徒だ。
「『定時制の生徒が殺された』って警察から学校に電話があって、『2日目は中止にします』という先生からの連絡が回ったの。大至急次の人に電話して!」
博文は急いでクラスの男子生徒に中止の旨を電話で伝える。

翌朝の朝刊の地元欄に、「昨夜9時頃、県立修学館高校定時制4年のアルバイト(19)が殺された」という記事が掲載された。顔見知りの男による犯行だったが、事件の波紋は意外な方向へ及んだ。
「今日の芋煮会は中止ですか!?」
「私も今朝の新聞で知りましたけど、桜庭の卒業生が殺人を犯した時に、のうのうと芋煮会を楽しめますか? 今日は被害者の冥福を祈る事を考えて下さい」
クラス担任からの電話を受け取ったみくは冷静だった。文化祭中止の連絡を受けた名波は怒りを通り越している。
「みんな文化祭を楽しみにしてる所で、桜庭のかつての在校生が人殺し。多くの期待は何だったの?」
克彦は、もっともな心配を募る。
「こりゃ来年の入試に響くかも知れないね」
再び名波に学校から電話が入る。予定を繰り上げ、午後から撤去作業を行うと言う。

修学館の全生徒が体育館に集められ、緊急全校集会が開かれる。この場で明かされる事件の全容は衝撃的なものだ。校長が説明する。
「今朝の朝刊で既に伝えられた通り、昨夜、我が校の定時制の生徒が顔見知りの男に殺されました。定時制生徒会長の鈴木佳純さんです。鈴木さんは、本日、この場で行う予定だったディスカッションの準備のために昨夜8時半過ぎまで学校に残り、電車で帰宅の途につきました。9時前に自宅の最寄り駅に到着し、駅を出た所で顔見知りの男に強姦されそうになり、サバイバルナイフで左頸動脈を切断されたショックで殺害されました。駅員の通報で逮捕された男は、『男をレイプしようとした自分に腹が立ち、護身用のサバイバルナイフで殺した』と犯行を認めています」
佳純は身勝手で理不尽な理由で殺された。校長は犯人の身辺状況について触れず、佳純が殺された事実のみを伝えた。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 高橋晶子 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ