みんなが学校の校門を潜ってから五分後、一人の男子生徒が駆け足で学校に向かっていた。遅刻なのは分かっているが頑張って来ましたアピールしてるのだろう。
閉められた正門の向こう側には生徒指導部の方々がまるでゴール直前のマラソン選手を称えるような笑みで彼を見ていた。
正門に着くなり彼は、「いや〜。頑張ったんですけどねぇ〜。」
とお決まりのセリフと作り笑いを無理矢理作りながら頭を掻く。 「お疲れさん。遅刻は覆らないから。常習犯の二年一組の伊藤君。」
先生方も笑っているが目は完全に佐藤を小バカにしていた。
まぁこんな事で遅刻をパス出来るのはニ回が限界だろう(二学期始まって十回は言っていた)
勿論伊藤もこんな猿芝居通用しないと分かりきってはいた。先生方が門を少しだけ開けながら伊藤の名を遅刻者リストにシッカリと刻んでいた。
教室に着いて自分の席にカバンを起きながらクラスメートとの雑談に花を咲かせ一時限目が始まる…こんな当たり前の日常と何処にでも居そうな少年がこの後非日常的な世界に放り込まれる事は誰も考えはしなかっただろう。