それは雪の降る二月のある日。
山神加奈子は成人式からの帰りで、晴れ着のまま雪降る道を歩いていた。
雪は何故か降るだけで全ての物音を消し去り、音の無い静の世界へと辺りを変えて行く。
聞こえるのは彼女の草履のコツコツという足跡だけだった。
『寒い!!早く帰りたいなぁ。』
加奈子はそう思い、手に息を吹き掛けて彼女の白く小さな手を暖めた。
そして彼女の左手の薬指には銀色のリングに濃いブルーの宝石が控えめな感じで埋め込まれている指輪が嵌められていた。
彼女は気を紛らわそうとしたのかエルメスのポーチからiポッドを取り出してイヤホンを耳に付けた。
流れてくるのはエロかわいいと世間で評判の最近リリースされたLoveソングだ。