方形の白いテーブルの上には、冷茶の入った魔法瓶と大きな漆椀に山と盛られた菓子類・それにグラスが二人分、要領良く置かれていた。
九重モエは魔法瓶を持って自らグラスを二つとも満たし、港リリアに進めながら、
『ではうかがいましょうか』
本題に入った。
グラスを受け取り恐縮して見せた第三中学校副会長は、
『我が校の指導者―梅城ケンヤについてです』
青い目を光らせた。
『あなたの上司ですわ?』
しばしば純粋培養の典型的なお嬢様呼ばわりされる九重モエが、的外れな受け答えをする事は珍しくなかったが、この時確かに彼女は戸惑っていた。
『彼についてどう考えますか?』
港リリアは慎重に話を振った。
『優秀なリーダーですわ?』
『それだけでしょうか?』
『それだけって―リリアさん、それは普段彼の側にいるあなたの方が良くご存知でしょう?』
九重モエは察知していた―\r
今の副会長は確かにおかしい―\r
そこはかとなく感じさせる殺気めいた雰囲気を見て取れぬ程、穏健派の指導者は鈍感ではなかった―\r
『では言い方を変えましょう―危険ではありませんか?』
しびれを切らしたらしく、港リリアは直接的な言い方に切り替えて来た。
『危険って―梅城会長がですか?』
モエは考えるそぶりをした。
『実力があり、生徒の支持が厚い―危険所か頼もしくはありませんか?』
『そんな風に本当にあなたが考えているのですか?』
ある意味、九重モエの方が一枚上手みたいだった。
『では副会長はどうお思いなのです?あなたこそ、梅城会長の事をそこまで危険視するだけの理由があるのですか?』
港リリアは降参するしかなかった。
『分かりましたハッキリと言いましょう―梅城ケンヤは指導者としては最高の人物です。ですが、思想家としてはこの上なく危険な存在なのです』
九重モエはそれを聞いてしばらく黙りこくった―\r
『ですが』
長い沈黙を置いて、ようやくモエは口を開いた。
『それを言うべき対象が間違っていませんか?あなたがそれを梅城会長に話すのが筋であって私に言っても意味がありますまい』