『お母さん‥。あたし、病院へ行きたいの‥‥。』
『病院?!病院位一人で行けるでしょ?熱がある訳じゃないんだから。母さん付いて行かなくても。』
『違うの‥。産婦人科‥。』
『産婦人科?!なんであなたが?!』
母は一瞬、怪訝そうな顔をした。
『お願いだから‥。お母さん一緒に行って‥‥。』
あたしは涙をこらえていたけど、こらえきれず泣いてしまった―。
頼れる人は母しかいなかった‥。
もう自分一人ではどうする事も出来なかったから‥‥。
あたしは母に連れられて産婦人科へ行った―。
* * * * *
『妊娠9週目に入っていますね。』
産婦人科医が言った。
『妊娠?!ちょっと先生何言ってるんですか?!奈央は、まだ小学校6年生なんですよ!!妊娠する筈がないでしょう?!悪い冗談はやめてください!!』
母は産婦人科医の思いもよらない言葉に、酷く動揺していた―。
あたしは俯いたまま、黙って座っていた。
『お母さん。お母さんがそんなに動揺されては困りますね。その様子では、お子さんの妊娠の可能性さえ全く知らなかったという事になりますね。現実をしっかりと受け止め、お母さんの方からお子さんの話をじっくり聞いてあげてください。』
産婦人科医はありきたりな偽善の言葉を並べ立てた―。
そう―。
あたしと『父親』との関係は、あたしの妊娠を機に、母に全てバレてしまったんだ―。