煤取り?

堀尾南  2008-01-02投稿
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「…………けほっ。」

雪は、僕の顔に触れても溶けて水になることはない。

ここ、「アナトス」という僕の街は、君達の地理知識でいくと欧州の町並みな風景をしていると思えばいい。移動手段は馬で、雪が積もる街のレンガ道に星の数ほどに蹄鉄(ていてつ)の跡がついている。

僕はその跡すらつかない真っ白な積もり雪に横たえて、身をまかせる。降り続ける銀色の粉雪が服のあちこちについても、僕は手ではらいもせずに、ただ…曇り空を見た。

近年に我が国の国王は税を高くなされました。税はいつもの3%を10%になり、家の隙間を直そうにも、食材を一つ買うにしろ、移動の馬に餌をやるにも税はかかった。僕の記憶に『誕生日プレゼント』は一切ないんだ。あるのはパンと一緒にいつも出してもらったお湯だけのスープも、ぜいたくなことだと税が上がった日に思い知らされたぐらい。貧乏な家庭にはそれぐらい大変なことだった。そして貧富の差が生じ始めたのもこのころ。

アナトスは人口1500万人。近隣の国に比べると中ぐらいの規模となる、海に面した漁業が盛んな都市でもある。そんな国に住む1500万人の中には、親が無いやら、家が裕福でないやらでこの税上げによって、子どもは路上に出されるか出なきゃいけない理由でホームレスのような生活を強制的にさせられるストリートチルドレンとなった。そんな子どもたちの平均年齢は10歳。

あの税上げの日から現在まで、ストリートチルドレンは生きるために『煤取り屋』という仕事をする。『煤取り』とは煙突の中を掃除すること。一年の中で寒い時期が多いアナトスにとって、煙突は唯一の暖がとれるものであるため、各家には必ず煙突がついている。ストリートチルドレンは各家を尋ねて『煤取り』の仕事をもらいにいく。

だが、この『煤取り屋』はまだ小さな子どもにとって命懸けなもの。屋根上に登って煙突に入って上から下へと煤取り掃除をする。でも、何メートルもある暗い煙突の中で子どもを支えるのは麻ヒモ一本。運悪く落ちて、最悪、死んでしまうこともある。加えて寒さもあり、靴さえ買えないストリートチルドレンにとって堪えれるものではなかった…。

僕もそのストリートチルドレンの一人。今はただ雪の上に横たえる。

「馬車を停めて」

そんな僕の前にきれいな女の子が現れた。



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