「どんな時でも 救世主は現れるものなんじゃな。
いいかい?
例え何が起ころうと諦めなければ世の中は捨てたもんじゃないってことだよ。
サランと言ってな、 人間の祖先だった妖精じゃな。
サランは虫の息の火の妖精に誓ったんじゃ。
きっと、この世の中の何処かに水の妖精が居るはずじゃ、とな。
何年かかろうとも、必ずや水の妖精を見つけて来ると。
〈嫉妬〉は、その話しを聞いて密かに身を隠していたのじゃ。
何か企んでいたんじゃろうな…
サランが水の妖精を探す旅に出てから早、数百年と言う月日が経ってしまってな。
枯れて行く世の中では、そう簡単に見つけ出す事は不可能だった訳なんじゃ。
さすがのサランも諦めかけた ある時に やっと見つけ出す事が出来たんじゃよ。
火の妖精の話しを聞いた水の妖精は それはもう大変悔やんで立ち直る事が出来んかった。
しかし、サランの必死の努力でようやく復活してな、
無事に火の妖精の所まで辿り着いたんじゃ。」
眉間に皺を寄せる子供達。
「ところが… サランが旅に出てから〈嫉妬〉の策略にはまってしまった自分自身に決着を付けたかった火の妖精は
最後の力を振り絞って〈嫉妬〉に立ち向かって行ったんじゃ。
〈嫉妬〉は火の妖精に一気に滅ぼされたかの様に見えたんじゃがな…
油断をした火の妖精は〈嫉妬〉の思う壷だった。
火の妖精は完全に消されて 〈嫉妬の炎〉として この世を貪(むさぼ)って行ったのじゃ。
「火の妖精はいなくなってしまったんだね…」
やるせない表情の子供達を見た老人は、
「まだまだ そう慌てるでない。 それがじゃな…」