目が覚めたら、病院の白いベッド。
「……ん」
「アサコ、大丈夫か」
声を掛けてきたのは遥人ではなく大地だった。
「……大地?な、んで?」
「遥人、バイトあるっていうから交替。遥人から連絡もらってな。」
「……」
大地が担当医を呼んだ。
「じゃ俺、廊下に居るから」
「以前、喉の手術されてますよね?」
「はい。16の時だから……3年前です」
「今回の発熱なんですが、喉の炎症によるものと思われます。
再発……といっていいかもしれません」
前回の手術が終わった後、医者に言われた。
“再発したら、声が出なくなるのも時間の問題”
とりあえず検査入院。
これで、再発が確認されたらあたしは決心しなけきゃ。
「アサコ、どうかしたのか?」
「ううん。……喉の病気、再発したかも」
手術をしたのは、大地のお父さんだった。
大地はあたしを院内で発見し、病気の事を知った。
サンクスのメンバーには言わないよう口止めした。
(と言っておきながら、この間、遥人にあっさり教えたあたしだけど)
「そう、か」
「だから検査兼ねて入院」
しばらく沈黙が続いた後、あたしが口を開いた。
「陽一が帰国したみたい」
「嘘だろ?」
「遥人が言ってた」
すると遥人がやってきた。
「目、覚ましたか」
「うん。迷惑かけたね」
「悪かったな。さっき」
「ううん。遥人のせいじゃないよ」
「遥人、今アサコから聞いたんだけど。
……陽一のこと」
「事実だ」
遥人は早口にそう言った。
サンクス解散の原因は、大地の脱退が主だった。
でも大地が脱退したいと告げた時、あたしたちは必死で止めたけど陽一は止めなかった。
俺らもそろそろ潮時かもな
その一言が元で更に亀裂が走った。
遥人はその一言に怒り、怒りまかせで解散。
解散の要素は大地の脱退より、相性があったかもしれない。
あたしは陽一が昔から海外に憧れていたのは知っていた。
実際アメリカに飛んだ時はまさか、って思ったけど。
でも、今なら陽一は解散を“いいチャンス”
って考えてたんだろうって思う。
大地にとっての苦渋の決断だった脱退を利用した。
と、遥人と大地は考えている。
「何だよ事実って?」
大地が言う。
「俺、今、会ってきた」
「バイトは?」
「嘘」
「で、陽一は?」
遥人と大地の早口な会話についていけない
「会えねぇってよ」