ポク…
「え!?」
まるで木魚の様な音がした瞬間、修二の顔は強張り、足が止まりそうになったが、止まらなかった。
『落ち着け…
今のは気のせいだ…
絶対立ち止まってはダメだ…』
ポク…ポク…ポク
音は段々大きく、かつ近いて来ている。
そして感じていた寂しい静けさは、目の前に刃を突き付けられている様な強烈な殺気へと変貌した。
『マジかよ…
怖がるな…
絶対に止まるな… 絶対に走るな…
絶対に後ろを振り向くなぁ!!!』
口の中はカラカラに乾いて、対照的に額からはダラダラと冷や汗が毛穴から吹き出していた。
ポクポクポクポクポクポクポクポクポクポク……
息は乱れ、心臓は高鳴り、心体共に危険を修二に知らせている。
ポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポク…
そして生臭い腐敗臭が修二を束縛し、ベトベトした生暖かい手が肩に乗り、首をなぞった。
修二の思考回路は完全に崩壊した。
「うわアァアァァ!!!
殺されるぅ!!!」
修二はそう叫ぶと糸が切れた様に走り始めた。
ポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポクポク