アジアンブロー ‐最上級の愛の物語‐・12

よこま  2008-01-03投稿
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‐第7章 副将軍 ソンの愛と悲しみ‐

「ソン様、これを。」

侍従から渡された大きな包み。

「何です?これは。」

「どうぞ、お開け下さいませ。」

「何方からの贈り物ですか?」

そう言いながらソンはその包みを開いた。

「これは…」

「明後日、ソン様がお召しになるチョゴリでございますが。」

「私がこれを!?」

「即位はこの国の正式な政(まつりごと)でございまして…」

「私は、具軍服(ググンボク)以外、身に着けないと言ってあります!」

騒ぎに駆け付けた長官。

「いかがなされましたかな。」

ソンは無言のままだった。

「ソン様…この送り主が シナ様からであったとしても…お召しになる事は出来ぬとおっしゃるのですか?」

「お兄様から?」

「シナ様から、この事はお伝えしないようにとお仰せられましたが…やはり、シナ様が心配なされていた通りでございましたな。」

大きく溜め息を漏らす長官だった。

ばつの悪くなったソンは再び差し出された包みを受け取ると無造作に椅子へ放り投げた。


ゆっくりと沈み行く薄紫色の夕陽を眺める為に外へ出た。



ソンの生まれ故郷である北都(ホクト)は東国の北東部にある小さな村だった。
15年前に起きた巨大台風によって、北都は壊滅状態になってしまったのである。
村人の殆どが、この台風の犠牲者となり、奇跡的に助かった幼いソンは天涯孤独となってしまった。


(回想)

「シナ兄さん、ソンはどうしたらもっと強くなれるの?」

「ソンはどうして、そんなに強くなりたいんだい?」

「ソンは…シナ兄さんみたいに武将をめざすんだもの!」

「えっ? 武将…!」
「いけない事? 」

「うぅん…」

「ソンはもっと、もっと強くなってお父さんとお母さんに恩返しするの!」

「ソン…」

「ソンは…お父さんもお母さんも、シナ兄さんも大好きだから!」

「そうか…」


優しく微笑むシナに、ソンは淡い感情を抱くようになって行った。


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