三月十日 今日は天気も良く、外で小鳥が春の季節が来たのを告げるかのように、元気に鳴いている。そんな小鳥の鳴き声に耳を傾けたまま、快晴の空を見つめていた。 「うぅん」 手足を伸ばしたのが気持ち良かったのを覚えている。今日は滅多にない外出の日だった。お昼過ぎに迎えが来る予定で、行き先自体はあまりいい場所とはいえないが、久しぶりの外出で迎えがくるまでの時間が待ちどうしかった。
だけど、そんな時間の合間でも考えてしまう… 「僕はなんの為に生きているんだろう」 僕の存在価値がどこにあるのか。 生きている価値の無い存在なのか、それとも特別な存在なのか…
そんな事を考えているうちに、部屋に迎えがきた。 「ほら、出ろ!行くぞ!」相手の呼び掛けに応え僕は部屋を出た。 今日は、僕の為にみんなが集まる事になっていた。僕の存在価値についての話し合。外に出たのはうれしかったが、正直、気がすすまかった。 「みんなの意見が恐いから。しかも、僕の意見は受け入れてくれない。赤の他人に存在価値を決められてしまうのだろうか。」…。 そう思うと腹立たしさや、悔しさが込み上げてきた。着いてからしばらくすると話し合いが始まった。 案の定、みんな勝手な事を言ってくる。 後ろで見ているやつらも、コソコソと勝手な事を言っている。僕をフォローしてくれる人もいたが、気休め程度…
「うるさい!」 心の中で叫んでいた。 「おまえらも心の中では、金、財産、見栄、薄汚い事しか考えてないくせに。僕がおまえらの存在価値を決めてやる!」 その時、僕は閃いた。 僕が、他人の存在価値を定める時に、僕の存在価値が出てくるのではないか。 「やっぱり、僕は特別な存在なんだ!」 だからあの時も…、僕の中で恭子や涼太の存在価値が無くなったからなんだ。 僕は正しいんだ… 気付いたら話し合いは終わっていた。 だが、この日の話し合いの場には感謝している。 僕の存在理由を気付かせてくれたから。 「僕はなんの為に生きているんだろう。」 もう、これからはこんな疑問を考えなくてすむのかな。 つづく…