世界で一番大好きで、世界で一番大嫌い

かなぎ  2008-01-04投稿
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田舎者の私が好きになったのは、都会から転校してきた男の子。
仲良くなりたくて、仲良くなりたくて。
彼がクラス委員になれば私も立候補し、帰る方向が逆でも嘘ついて一緒に帰った。
友達に言わせれば、彼はとりたててかっこいいわけではないく、背格好、成績、スポーツと、どれを見ても惹かれる要素はない、らしい。
確かに冷静になってみればどこにでもいる、ごく普通の少年だ。王子さまのよいに繊細でもなければ、野性味溢れるワイルドさとも無縁。
ただ、私は冷静ではなかった。彼に出逢った瞬間から、彼に対してだけ冷静という感情をなくした。
どこが好きかと聞かれたら、きっと具体的な答えを導くことは私にはできない。いや、しちゃいけない。
彼のどこが好きなのかわかった時、私の恋は終わってしまう気がして。
彼と話をするだけで楽しくて、楽しくて、悲しくて、悲しくて。
たくさん話しをしたあとには、必ず悲しさが私にのしかかる。こんなに大好きなはずなのに。もう、話しをするのも億劫になるくらい悲しくなる。
もしかしたら、彼のことを好きなんじゃないかもしれない。そうじゃないと、悲しいなんて感情の説明がつかないじゃないか。
そうだ、嫌いなのかも。
そうすれば、悲しみの答えがでる。
じゃあなんで楽しい?答えはでない。毎日落ち込む思考の迷路に今日もまたはまり込む。メビウスの輪のように、捻れながら、必ず同じ場所を通り、出口が見つからない。
そしてまた朝になり、夜になり、また朝がくる。
彼は優しく、私の知らないことをたくさん教えてくれる。そのたびに惹かれながら、離れていく。
振り回される日々はまだ続く。好きだとわかっても、メビウスの輪は私に出口を与えてくれない。彼に対する葛藤が私を強くし、弱くし、喜びを与え、喜びを奪う。
いっそのこと告白してしまおうか。この関係が崩れてしまうかもしれないけど。答えのわからない感情に振り回される日々から解放されるなら。
どんな告白がいいだろうか。やはりオーソドックスに放課後の帰り道、いや、古典的だけどラブレターを書くのもいいかもしれない。
どんな言葉がいいだろうか。可愛らしい言葉、綺麗な言葉、あえて命令口調。考えるだけで楽しくて楽しくて。そして気付いた。

なんだ、結局好きなんじゃないか。
あまりにも単純な自分に気付き、また彼を嫌いになる。



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