手術の日、母はずっと側に居てくれた‥。
手術台に乗せられたあたしは、足をカエルの様に開かされ、看護師達が手術用の器具を、せかせかと用意していた。
まだ若干12歳の子供には、あまりにも残酷な仕打ちだった―。
『奈央ちゃん。何も怖がる事はないよ。大丈夫。奈央ちゃんが寝ている間に手術はちゃんと終わっているからね。
1から10まで数をゆっくり数えてみようか‥。』
産婦人科医が言った。
『1‥2‥3‥‥4‥‥5‥‥‥。』
段々、意識が遠くなり‥‥。
あたしは麻酔によって眠らされた―。
* * * * *
目が覚めると、側で母が添い寝をしてくれていた‥。
ずっとあたしの手を握りしめたまま―。
『お母さん‥。』
『‥奈央‥?目が覚めた?』
そこには母の優しい笑顔があった‥。
『お母さん‥。ずっと側に居てくれたの?』
『‥そうよ。母さんずっと奈央の側に居たよ。これからも、ずっと奈央の側に居るからね。
奈央は母さんにとって、一番大切な掛け替えの無い存在なんだからね。』
母はそう言って、あたしの頭を優しく撫でてくれた‥。
『お母さん‥。子守歌歌って‥。』
まるで小さい頃に戻ったみたいに、あたしは母に甘えていた‥。
『よしよし‥。いい子だね‥。奈央‥。ねんねんころりよ‥‥おころりよ‥‥‥奈央ちゃんは良い子だ‥寝んねしな‥‥‥。』
このまま時間が止まってしまえばいいのに―。
手術が終わった安堵感からか、あたしは母の子守歌を聞きながら、また眠ってしまった‥‥。
お母さん‥。
心配掛けてごめんね‥。
あたしこれから、うんと親孝行する‥。
もうお母さんを悲しませる様な事は絶対しないから‥‥。
しないから‥‥‥。