殺生、承ります。

穂川ふうま  2008-01-05投稿
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〜とある喫茶店?〜


中司は訳が分からず、
「はいぃ!?」
と、素っ頓狂な声を放った。
「いや。はいぃ、じゃなくてよ、あんだよ。会った事」
諸塚はだらし無く椅子に膝を立て、そこに腕を力無く乗せる。
「知りませんよ」
中司は言う。
「おい、またそれかよ。だから、会ったもんは会ったんだよ」
「何処で?」
「俺に仕事を、おめーが頼んだだろうが」
諸塚の口は悪かったが、どこか憎めない、無邪気さがあった。
「何の?僕は何も覚えてない」
「は!?ふざけんなよ?どんな思いでやってきたか、知ってんのかよ?」
諸塚は勢いよく立ち上がり、たじろいでいる中司の左腕を引いた。
当然、中司は驚いてこう言う。
「な、何ですか!?」
諸塚は中司を引いたまま、レジで金を払い、
「来いよ」
と喫茶店を後にした。


〜とある住宅街〜


「おい、まだか?」
妙なまでにひっそりとした声が響く。
朝八時。
黒いビニール袋を重そうに運ぶ若者が、二人。
「あんたも見てないで手伝って下さいよ…」
敬語なのかそうじゃないのか、どちらともつかない言葉が放たれ、青いゴミ収拾車の横で煙草を吸っていた男は渋々、歩み寄る。
「早くしろよ、予定通りにしねえと俺達もビニールに入れられる」
「ハハハ、それは嫌だ。それより、今度のは重いな、相当なゴミだ。臭いし、腐ってんじゃね?」
作業用のつなぎをきっちりと着た若者は辛そうに言った。
「確かに。臭うな」
等と愚痴を零しながら着々と作業は進められた。
が、途中で作業用の帽子を逆に被った若者が、自分の持つ袋を見て小さく叫んだ。
「あっ、やばい!」
一つ目を運び終えた二人は帽子の若者に注目した。
「どうした!?」
帽子の若者は、動揺を隠せない。
「っ…血が、漏れた!」



諸塚と中司は住宅街のあるゴミ捨て場に立っている。
夕方六時。
さほど人気はなく、帰宅途中の子供が二、三人通るくらいだ。
「此処、何処ですか?」
「おめーの、憎い憎いデブ上司ん家の前だよ」
諸塚にそう言われ、中司はびくりとした。
「っ!!」
諸塚は、”立入禁止”と云うような黄色いテープを張り巡らす家を指差す。



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